宝石の略歴

古代では宝石を身に纏うという行為は、現代とは全く異なる意味合いがある。数百年(または数千年)前、宝石は事故や病気、悪霊から身を守るものであると信じられていた。つまり保護的な目的で使われていた。ところが現代では、宝石は自己満足感や、異性からの注意を引いたり、もっぱら装飾的な目的が念頭にある。

エジプトの古代王であるファラオたちは大玉押金亀子などの紋章を彫られた指輪の印章を身につけ、それを大切な書物に捺印していたということをご存知だろうか。彼らは、様々な象徴的な紋章が描かれた大振りなイヤリングも好んで着用していた。

そうした宝石類は、金、銀、銅の高価な金属で作られており、エメラルド、メノウ、アメジスト、オニキス、ジャスパー、クリスタル、ターコイズ、パール、琥珀、サンゴなどのビーズで装飾されている。金は古代エジプトにおいてとても高価なものであったことは事実として知られており、ファラオたちに加えて、裕福層の市民は金細工や宝石と一緒に埋葬されていた。

古代ギリシャ人は銀を好んだが、装飾には金や貝が使用された。古代ギリシャにおいて男性は、全身をあらゆる宝石で着飾る女性達とは対照的に、宝石を身につけるのを避けていたというのはよく知られていることである。

古代ローマ人はよく琥珀を使用していた。最も一般的な宝石はブローチであるが、男性は力や地位を示すために、巨大な金の指輪を身につけていたことはよく知られている。

見てわかる通り、人間の歴史のほとんどの過程から、人は自分自身を装飾する必要性を感じていたと言える。世界のどの場所でも、男性女性ともに異なるタイプの装飾品――例えば、殺された動物の骨や石、植物など――を身につけていた。

チャーム

たくさんの異素材の金属の発見が進むにつれ、装飾品の種類は以前より異なり、進化していった。こうして、宝石は多様な伝統の象徴になり、そして今日にも通じる民俗文化の一部となった。

ひとつ興味深い話がある。13世紀、宝石のために貴重な素材(ダイアモンド、金、パール)の使用を禁止する法律がヨーロッパに広まっていた。1804年、ナポレオン・ボナパルトがフランスの皇帝になった時、他の法律の中で、その貴金属の使用禁止の法律を廃止したのである。

そのバロック時代に、最も人気のあった宝石はパールであり、社会的身分の高い人々は様々な種類のダイアモンドで着飾っていた。

世界中の人々は今も昔も、地位の象徴であったのと同じように、ファッションの一部として或は装飾として、宝石の美しさに魅了されている。それぞれの人があらゆる方法で、様々な象徴的意味として宝石を身につける。どんな方法でも、環境や身につける理由を問わず、身に纏う宝石には、自身を着飾るだけではなく、元気付け、幸せに導く役割も担っている。